16クリスマス復刻に伴い再び再録されたイシュタルを紹介。
基本的に復刻時にしか再録されず入手機会が限られやすいイベント出身☆5なのだが、既に2回再録済みだったりと実は割と入手機会自体は多い方だったりする。
 
◆イシュタル
イシュタル
「ヤッホー! あいかわらずのんびりした顔をしているわね!
 でもホッとした、アナタはそうでなくちゃ。え? 知らない?覚えてない?
 ……そっか、まあそうよね。私は女神イシュタル。美の女神にして金星を司るもの。
 せいぜい敬い、畏れながら貢ぎなさい」

紀元前2600年ごろ、古代メソポタミア文明で信仰されていた女神が一柱。
美と豊穣、戦争と破壊を司る神であり、現世での人の営みを守護する存在。
冥界神エレシュキガルを姉に持つ。

彼女の存在が語られるのは人類最古の叙事詩「ギルガメシュ叙事詩」。
ギルガメッシュに求婚したが断られ、その腹いせにメソポタミア全てを滅ぼすほどの力を持つ超弩級神造兵装にして超巨大神獣「天の雄牛グガランナ」を持ちだした。
しかしそのグガランナはギルガメッシュとエルキドゥの2人によって撃破されてしまう。
アッカド語版とシュメール語版、メ・トゥラン版ではやや内容が異なり、シュメール語版では遊び呆けているギルガメッシュ王を罰するためにグガランナを呼び出したとも。

兎にも角にもグガランナは2人によって倒されたが、当然ながら彼らの行いは神に背く行為であった。
神に歯向かった罰としてエルキドゥは命を奪われてしまい、親友の死を目の当たりにしたギルガメッシュは不死の霊薬を求めて冥界探索へと赴くのであった。

また、グガランナ以外では「エビフ山の破壊」「イシュタルの冥界下り」のエピソードがよく知られており、7章でも取り上げられる。
エビフ山の破壊のエピソードは、人類最古の名のある詩人とされるシュメールの王女エンヘドゥアンナが記したもの。
豊かな山であったエビフ山を完全破壊することでその神威を示したというものである。

「イシュタルの冥界下り」はウル市やニップル市で発見された物語。
冥界を訪れたイシュタルであったが、冥界の掟に悉く反していたことから冥界神エレシュキガルの怒りを買う。
彼女は冥界に下るまでの間に7つの門をくぐるが、門を通過するたびに衣服や装飾をはぎ取られ、エレシュキガルの下へ辿り着いた時には全裸となっていた。
豊穣の神が力を失ったことで地上は荒廃するが、エアのひらめきによって救いだされ奪われた装飾品なども取り戻し地上への帰還を果たす、というものである。

ギルガメシュ叙事詩がその後世界に広がるあらゆる英雄譚のモデルとなったように、彼女もまた後の世界における重要な神のモデルとなった。
有名なものはローマ神話のヴィーナスやギリシャ神話のアフロディーテであり、またエジプト神話のアナトの原典ともされる。
特にヴィーナスのモデルとなったことから金星神としての側面を有している。

2016年のクリスマスイベントで実装され、直後に実装された第7特異点「絶対魔獣戦線 バビロニア」でもメインキャラとして登場。
ウルクの神官によって召喚されるもその神官たちは死亡。
その後は各地を飛び回ってはあちこちを爆撃し近辺の村人から金品を奪っていた。
しかしその真相は「各地に現れた魔獣を撃破して村人を護っており、奪った金品はその報酬として持っていっていた」ということであり、あくまでも人類の味方であった。
ただし、ギルガメッシュを度々襲撃していたのはただの私怨。

乗っているのは天の舟「マアンナ」の船首部分。
イシュタル自身は槍も使用するがサーヴァントになるにあたりアーチャーに徹しており、このマアンナを弓に見立てて放たれる魔力の矢を主な武器とする。
魔力弾の発射モーションには指先から放つものもあり、後述の「ガンド」を意識しているものと思われる。

強欲で冷酷な野心家ではあるが、その一方で生命を司る慈愛に満ちた存在。
性格面に色々と問題があるが、人間にとっては紛れもない「善なる神」である。

●遠坂凛
イシュタルは人類史においてその存在が成立した中でも最古の神の一柱であり、当然ながら聖杯如きによる召喚は不可能。
それ故に、聖杯と縁があり近い性質を持った人物を依代とした疑似サーヴァントとして現界を可能としている。
依代となっているのはFate/staynightのヒロインの一人「遠坂凛」。
魔術師の名門遠坂家出身の少女で、第五次聖杯戦争におけるアーチャーのマスター。
士郎にとっては魔術や聖杯戦争における先輩あるいは師匠のような存在であり、戦友であり、ライバルであり、学校の同期であり、そして選択次第では恋人となる存在。
表では優雅で完璧なお嬢様といった風に振舞っているが思いっきり猫を被っており、実際は勝気で男勝りな性格。
また後述の魔術の特性も関係して金にがめつい、超弩級の守銭奴でもある。
倫理観については割とまともな部類で、時に非道、非情な道に進むこともある魔術師としては比較的一般人に近い常識的な考え方や価値観を持っている。
しかしそれは裏を返せば命のやり取りをする場である聖杯戦争においては己の首を絞めかねない「甘さ」であるとも捉えられる。

遠坂家は宝石魔術を扱う家系。
これはキシュア・ゼルレッチ・シュヴァインオーグに由来するもので、遠坂家には第二魔法に関連する魔術礼装もいくつか眠っている。
宝石魔術はその名の通り魔力を込めた宝石を使って発動する魔術。
宝石は高価なものであればあるほど性能が向上するが、一度使用すると灰になって消滅してしまう。
つまり、ランクの高い魔術を使うとなるとそれだけ高価な宝石が必要になるという超金食い魔術なのである。
父・時臣は遠坂の魔術師としては凡庸(とはいえ並の魔術師よりはずっと優秀)だったが金の扱いには特に長けており、地元である冬木の中でも位の高い霊地を抑えそれを魔術師に貸与することで潤沢な資金を確保していた。
時臣の死後それらは凛の後見人となった綺礼が管理していたのだが、生憎綺礼はその手のものを扱う才能が全く無かったため凛の手元に残った資産はわずかなものとなってしまった。
それ故に高価な宝石を入手することが難しく、結果として重度の守銭奴となってしまったのである。

凛個人の魔術師としての才能も非常に高い。
魔術には地、水、火、風、空の五属性があり、大抵の魔術師はその中から1つを使い、2つ扱えれば十分に優秀であるとされる。
しかし凛はその五属性全てを扱える「五大元素使い(アベレージ・ワン)」であり、生まれながらに特級の才能を有しているのである。
他の五大元素使いには稀代の天才錬金術師であるパラケルススが存在する。

それに加え魔術回路の質が良いため魔術の出力も高い。
彼女は攻撃手段として北欧に伝わるルーン魔術「ガンド」を好んで使う。
ガンドは指先を相手に向けることで体調を崩すという一工程(シングルアクション)に分類される簡易的な呪術で、本来ならばその性能はせいぜい「風邪を引く」「胃もたれがする」程度の代物。
優秀な魔術師であればこのガンドにある程度の物理的攻撃力を持たせることが可能とされ、その域まで達したものは「フィンの一撃」と呼ばれる。
凛のものはさらに出力が高く拳銃並みの威力を有し、さらにそれを自動拳銃並みの速度で連射することができる。
誰が呼んだか「フィンのガトリング」。
流石にサーヴァント相手の有効打にはなりにくいが対人、対物攻撃としては十分すぎる威力を有しており、アーチャーの戦いをサポートすることも。

このように非常に優れた才能を持っているが、年齢的にまだ若く実戦経験にも乏しいため魔術師全体で見た場合の実力はせいぜい中の上程度(それでも同年代の魔術師と比較したならば飛び抜けて優秀であることには間違いない)。
またこれは多くの魔術師に見られる傾向だが機械に弱く、テレビのリモコンすら満足に扱えないらしい。
その上遠坂家の血筋というか、肝心なところで「うっかり」してしまうことがあり最後の最後で大ポカをやらかすことが多い。
特にこの遠坂秘伝のうっかり癖は魂に刻みつけられているレベルらしく、イシュタルにもその性質が大きく出ている。

疑似サーヴァントとなる際の人格は、イシュタル:凛でおおよそ7:3の割合で融合しているという。
基本的な記憶や自己認識はイシュタルのそれだが性格はかなり凛に引っ張られている。
凛の基本的には善良であるという面がかなり強く作用しているらしく、ギルガメッシュ曰くこれでも随分と大人しくなっているのだとか。
お金好き、宝石好きなのは両者共通であり、恐らくはこの点が決め手となって依代に選ばれている。


◆基礎性能について
HP13965はオリオンと水着アルトリアに次ぎ☆5アーチャーの中では3位と高く、またATK12252もアルジュナ、ギルガメッシュに続き3位の値。
カード配置は一般的なQAABB。
バスター以外はヒット数が多いためNP回収や星出し性能はそこそこに良好。


◆スキルについて
●クラススキル
対魔力A、女神の神核Bにより常時42.5%の弱体耐性を有しており、ケツァル・コアトルには一歩及ばないとはいえ弱体効果に対しては非常に強い。
さらに単独行動のランクもAと高く、クラススキルには非常に恵まれている。

●美の顕現[B]
味方全体の攻撃力とクリティカル威力を3ターンの間上昇できるスキル。
攻撃力アップはAランクのカリスマに匹敵し、CTも据え置きと実質カリスマの上位互換。
アーチャーは単独行動スキルによりクリティカルダメージが伸びるためその性質をさらに向上させることが可能。
ただし彼女自身は追加で星を獲得したり集中度を上げる手段を持っていないため、別途星出し要員は用意するなどして効率的に扱えるようにしておきたい。

●輝ける大王冠[A]
「自身に様々な効果を付与」と額面では何が起こるかさっぱりわからないスキル。
実際の効果は「自身のNPを増加&自身に確率で無敵状態を付与&自身に確率で無敵貫通状態を付与」で、NP増加以外の成功率は80%。
確率が高めとはいえ不確定なのでどちらかというとNP獲得をメインとして使って行くことになる。
NPの獲得量は30~50と非常に多く、それ単体で見ても十二分に優秀なスキルと言っていいだろう。

●魔力放出(宝石)[A+]
凛に由来するスキルで、宝石魔術により魔力放出を行う。
通常の魔力放出と違い攻撃力が上昇し、倍率も最大50%と高い。
しかし、効果が発揮されるのが使用した次の1ターンのみという非常に厄介な代物。
最大効果を発揮するには次のカードの並びも影響するため非常に難しいスキル。
宝具に合せるだけならそこまで難しくはなく、またCTが最短3と非常に短くなるためとりあえず撃っておいて効果が発揮されるターンにはイシュタルのカードを優先で切る、という使い方でもいい。


◆宝具「山脈震撼す明星の薪アンガルタ・ギガルシュ
「飛ぶわよ、マアンナ! ゲートオープン!……ふふっ、光栄に思いなさい?
 これが私の、全力全霊……!  打ち砕け! 『山脈震撼す明星の薪』!!」

ランクA++、対山宝具。
「エビフ山の破壊」の逸話に由来する宝具。
金星神としての神格を利用し金星の概念を疑似惑星としてマアンナに装填、発射することで山すらも一撃で粉砕するほどの凄まじい破壊力を発揮する。
しかし同じく金星神としての側面を持ち、彼女よりも高い主神クラスの神格を持つケツァル・コアトルには効かないというピンポイントすぎる弱点がある。
ちなみに「アンガルタ・ギガルシュ」はシュメール語で「大いなる天から大いなる地へ」という意味で、「イシュタルの冥界下り」の冒頭の一文。
また、この宝具は「ジュベル・ハムリン・ブレイカー」という別名も存在する。

属性はバスター、能力は「自身のBusterカードの性能をアップ(1ターン)〈オーバーチャージで効果アップ〉+敵全体に強力な攻撃[Lv.1~]」。
能力自体はベディヴィエールの「剣を摂れ、銀色の腕」の全体版と言ったところ。
シンプルにバスターによる破壊力を重視した宝具。
宝具強化未実装ながら自身のバフやバスターという強化しやすい色であるために広範囲の殲滅用途として非常に使いやすい。

元から高い威力を誇る宝具であるが、さらに強化が実装されたことでその破壊力がもう一段アップ。
さらに「スターを大量獲得」の追加効果を獲得。
獲得量は20固定で、次のターンのクリティカル追撃を補助できるようになったため総合的な火力はさらに強化されることとなった。


◆相性のいいサーヴァント
●マーリン
マーリン
マーリン構築における彼女のアタッカー適正は非常に高い。
バスター中心かつクリティカルを狙いに行けるアーチャークラスであるため「英雄作成」の恩恵を強く受けることができる。
ただし星出しを彼の宝具だけに頼るわけにもいかないので、別途星出し要員がいればより安定する。
当然マーリンに欠片を持たせるのもアリ。

●エミヤ(アサシン)
切嗣
「輝ける大王冠」の無敵付与は「それだけをあてにするには不安が残るが、決まればラッキー程度に割り切るほど低い確率ではない」という割と微妙な立ち位置の代物。
こういう時は任意のタイミングで敵の攻撃を押し付けられる切嗣の出番。
「輝ける大王冠」の使用タイミングで無敵が付いたならばスケゴで攻撃を押し付けてやれば折角の無敵を無駄にしないで済むのである。
同時に星も出してくれるのでクリティカルの手助けもできる。

●エミヤ
おかん
依代である凛のサーヴァントであった彼との相性も良好。
「鷹の瞳」使用状態で「無限の剣製」を使うとかなりの量の星を獲得できるため、どちらが殴るにしても高い火力を期待できる。
ただしエミヤはA特化という癖のあるカード構成をしているため、もう一人のカード構成はよく考えておきたいところでもある。


◆相性のいい礼装
自力で即座に50%のNPを獲得できるため、初期NP+50%系統ならば宝具の即使用が可能となる。
素殴りに関してはバスターやクリティカルが主体であるためそれらを意識したものであればなお良い。
バスター性能と宝具威力を上げられる「エアリアル・ドライブ」、シンプルに攻撃力を底上げできる「ゴールデン相撲~岩場所~」、宝具威力とクリティカル威力を上げられる「聖夜の晩餐」等がそのタイプのものでは有力。
一方で素殴りでも残りの50%は十分獲得可能なので、NP関係の効果を持たない礼装も問題なく使用可能。
宝具威力を追求するならば「黒の聖杯」、バスターチェインのクリティカル威力をより高めたいなら「月の勝利者」等も候補となる。


◆総評
「魔力放出(宝石)」はやや癖があるものの、それ以上の癖の強さを持つことが多いアーチャークラスの中では珍しく相手や状況を選ばずに運用できる汎用アタッカー。
安定した威力を有する全体宝具を容易に使用できるという性質から周回適正の高さは折り紙つきであり、セイバークラスの敵が複数登場するような場面では特に活躍できる。
「火力とNPを上げて宝具とBクリで殴る」というわかりやすい性能を有しているため、非常に使い勝手のいいサーヴァントであると言えるだろう。

宝具強化後はただでさえ高火力だった宝具が超火力の域に到達。
NP50獲得と全体宝具の中ではトップクラスの総合火力により、殲滅要員としての適性がさらに向上した。
ここまで来るとイベントでよく出てくる10万越えのサーヴァント級ですらバフ次第では一撃で倒せることもあり、周回はもちろんゲージ持ちとの戦闘でも一撃でブレイク→獲得した星で次のターンにもう一本ブレイク、ということもできるようになってくる。
使い勝手の良さはそのままに、より高い次元の火力で活躍できるサーヴァントになったといえる。